求人票に、「我が社はアットホームなところが自慢です。」と書いてあれば、ほぼブラック企業でしょう。
まず第一に、その求人票を書いているのは、代表者です。
代表が、自分の会社をアットホームだと言い切れるのは、それ以外に自慢するべきことが無いからに他なりません。
次に、アットホームだと思っているのは、代表だけです。
社員が、アットホームな企業だと思っているのならば、求人票を書くような立場の人物が、育っていて当然なのです。

会社におけるアットホームとは何か。

アットホームの象徴は、旧来の日本の「家」に関する、立場に言及せざるを得ません。
つまり、家長を中心とした、ピラミッド型の指揮命令系統の上で、問題やいざこざが起きずに成り立っていることを意味します。

例えば、トップダウンの指示に対して、部下の誰もが文句を言わない、イエスマンだけの会社です。
家長である社長からすると、みんな良く理解してくれている。
誰も、私に苦言を呈する者は居ないので、うまくいっている証拠だ。
社長は、そう考え、本気でアットホームだと思っているでしょう。

そうです。一番目の問題は、社長が勝手にアットホームだと思っているに過ぎないということです。
細々した問題は、日々起こっているばずです。
しかし、そんな問題は、社長の耳に入るまでもなく、部下たちが対応し、なんとか納めているばずです。

もうひとつ、考えられるアットホームの弊害として、社長は常日頃から、何でも、「ほうれんそう」つまり、「報告、連絡、相談。」するように言っているはずです。
しかし、部下が報連相するのは、うまく行ったことだけなはずです。
「こんなクレームがありましたが、一割増しで納品する用意があると伝えたら、考えておく。と先方は言っています。納品一割増しで、かたを付けても宜しいでしょうか?」
こんな、部下と社長のやり取りが、行われているはずです。
社長が登場しなくても、部下が、「落としどころ。」を心得ていて、相手に既に伝えているのです。
社長には、結果を報告しているに過ぎません。

どうして、そのような、形だけの「ほうれんそう」が生まれるのでしょうか。
社長が短気なだけです。
きっと朝礼で言っているはずです。
「時間は金なり。報告は、結論から述べるように。そうしないと、無駄な会話の時間が増えるだけなのだ。」

 

「アットホーム」とは会社にとって都合の良い文句である

アットホームな会社の定義って何でしょうか?誰から見てアットホームなんでしょうか?

アットホームに定義はなく、まさに言ったもの勝ちです。そしてアットホームだと思っているのは現場スタッフではなく、求人担当者から見て、です。

彼らのアットホームなイメージは、「給料安くても文句言わない」「自分を持ち上げてくれる」「自分のいう事を何でも聞いてくれる」といったところでしょう。

仕事とプライベートの線引きをあいまいにして、プライベートな時間も会社のために仕事させてやろう、といった意図も見え隠れしています。

良い会社の条件は、「キチンと決められた休みがあり、働いたら働いた分だけ社員の能力に見合った給料を支払ってくれる」これにつきます。

求人担当者から見たアットホームな環境は全く必要ないのです。

「うちは内輪でなかよくやってる会社だからさ、残業代とか水臭いこと言わないで尽くしてくれよ」「今期は売上イマイチだし、これからどんどん設備投資もしたいからしばらくはボーナスなしね。だっていいじゃん、家族みたいなもんだからサ」会社の上層部からそんな声が聞こえてきそうです。

そしてこんな会社はブラック企業の代表的なものです。

本当にアットホームならそれはそれで恐ろしい

アットホームと言われてあなたはどんな雰囲気を想像しますか?

上司と部下がフレンドリーと言っていいほど仲がいい、上層部に向けて意見が言いやすい、同僚もみな仲良しで夜は飲み会、休日はバーベキュー・・・、こんなところでしょうか?

ちょっと想像すると魅力的な職場に思えるかもしれません。でも少し冷静に考えてみてください。

上司と部下が仲が良い必要あるのでしょうか?

会社は縦社会です。それぞれ価値観や利害関係が異なるたくさんの個性的な人間が集まって一つの組織を形成しており、価値観が一緒の同年代の仲間が集まってできたサークルとは全く異なります。

そのカオスな状態を上手くコントロールして会社として正しいと思われる一つの方向に向かわせるのが上司の役割であり、基本的に業務においては上司のいう事を聞かなければいけません。

上司と部下が必要以上に仲が良かったらどうなるでしょうか?上司がいざ指示を出した時、すべての部下がいつも素直に従ってくれるでしょうか?

もちろん上司と部下のコミュニケーションは必要ですし、パワハラといわれるくらい横暴な上司はいかがなものかと思いますが、

上司はある程度怖く常に毅然とした態度をとっていなければ組織をまとめていくことはできないでしょう。

 

他にアピールポイントがない会社だから

「アットホームな会社です」「明るく楽しい雰囲気です」と求人が出ている会社に入社してはいけない始めの理由は、他にアピールするポイントがない会社の可能性が高いからです。

きちんとした一般的な福利厚生を用意していたり世間の水準より高額な給料をもらえれるのであれば、絶対にまずそこをアピールするはずです。

「うちの会社は特に書くことないし、うーん、アットホームとか明るく楽しいって書いとけばなんとなく響きもいいし、これでいいだろ!」

こんな感じで募集を掛けたのでしょう。

福利厚生はサラリーマンにとって給料と同じくらい大切なことです。

そんな中で最低限の福利厚生もアピールできないような会社はブラック企業の可能性が高いと思います。

そもそも今の時代、仕事は仕事、プライベートはプライベートできっちり線を引いてもらって必要以上に干渉されたくないと考えている若者は多いのです。

その時代の流れも考えず、「とりあえずアットホームって書いとけ!」と安直に考えるあたりその会社のレベルも担当者のスペックも知れています。

これはますますブラック企業の可能性が捨てられません。

 

社長におけるアットホーム

「月に二回、社員全員で、夕食会を開いている。もちろん、酒の飲める奴には、無礼講で飲ませて、率直な意見を聞いている。」
社長の言う夕食会は、いわば強制参加の、仕事の一部です。
アルコールダメなので、とやんわり食事だけしている社員も多いはず。
飲める人はどうでしょうか。
飲み会は無礼講。
良く聞くセリフです。
しかし、これは真っ赤な嘘。
社長は、元々飲み会の席で、社員の率直な意見を聞くつもりでいますが、社員は、絶対に酔いません。
ほんとに、無礼講で社長に物申したとしたら、翌日、その人のデスクは無いのですから。

「飲み会の席で、社員の忌憚ない意見も聞き、経営に役立てている。」
これが、社長の考える、アットホームな会社なのです。

社長が、やたらプライベートに口を挟んでくる。

これも、アットホームな会社の特徴です。
社員の家庭の問題も、理解して、フォローしてあげるのが、社長の考えるアットホームな会社だとしたら。
そうです。プライバシーもなにも、あったもんじゃありません。

「妻が、妊娠したのですが、つわりが酷くて、家事がほとんど出来ないのです。」
ホワイト企業なら、「残業せずに、早く帰って、奥さんを助けてあげなさい。」
こんな答えが返ってきてもおかしくありません。

しかし、アットホーム社長は、「そうか。良い産婦人科医を知っているから、奥さんに紹介してあげよう。」
大きなお世話です。視点がずれている事が分かってきましたね。

もっとあります。
社員自らが、ストレス過多で、精神的に不安定になった時、ホワイト企業は、契約している産業医のカウンセリングを受けられるように、セッティングするはずです。
アットホーム社長はどうでしょう。
「ストレスが溜まっているのなら、早速今晩飲みに行こう。なんでも思っていることを話しなさい。」
カウンセラーには、絶対になって欲しくない人物です。

アットホームな会社は、社員同士が助け合える会社だ。

社員がうつ病になり、しばらく会社を休むと言って来たとき。
ホワイト企業ならば、早速派遣社員を雇って、穴を埋めようとするでしょう。
うつ病が、しっかり治るには半年から一年はかかるというのが常識ですから。

しかし、アットホーム社長は、「社員の一人が苦しんでいる時は、他の皆でその穴を埋めよう。あの人が帰ってきてくれるまでの辛抱だ。苦しい時は、お互い様だからな。」
これでは、他の社員も潰れて行きます。
退職者が出て、益々会社は仕事が回らなくなっていきます。

アットホーム社長は、きっと、自分の身内や親戚を呼んでくるでしょう。
「苦しい時は、社長自らが解決策を示さねば。」
しかし、そんな訳のわからない世界から連れてきた、社長の息のかかった人が、即戦力であるばずはありません。
益々、会社は仕事が回らなくなっていきます。

社長も苦しくなって来た時、助けてくれるのは誰?

社長の、奥様や、娘さんが登場します。
そして、社長の経営の仕方に俄然とします。
こんな、やり方で、良くこの会社は倒産しなかったものね。
きっと、そう思うでしょう。

そして、情勢は一変します。
社員は、奥様や娘さんに、本当の意味での「ほうれんそう」を始めます。
返ってくる答えは、社長の返事とはまったく違う物でした。
ただ、そのことは相変わらず、社長の耳には入りません。
社長が要らぬことを言わない為に、敢えて、奥様や娘さんで報告は止めておく体制が出来上がるのです。

徐々に会社としての、対応方法が固まっていきます。
社員それぞれが考えて対応していたクレームも、会社の統一方針が出来てきます。
そして、クレームなんか我が社には存在しないと思っていた社長は置いておいて、奥様や娘さんが、社員と共にクレームに謝罪に伺うようになります。

そうして、取引先の信頼が取り戻せてきたならば、アットホームな会社は、別の意味で誕生しつつあることを意味します。
社長に言えなかった本音を、話せる風土が生まれてきます。
社長の独断と偏見は、奥様や娘さんによって封じ込められていきます。
「嫌なら、あなた一人で、この負債を追うことになりますよ。」
そんな、数字を示したうえでの決め言葉は、ワンマン・アットホーム社長には、反論の余地はありません。
理想的には、その負債を突き付けて、アットホーム社長には、代表権のない会長に退いてもらい、本当の意味でのアットホームな会社が生まれることを目指すべきです。

 

最後に

 

さて、とある一人の、アットホームと求人にうたっている会社を想定してみました。
アットホームで、通じる組織は、三人までだと私は思います。
求人票に、社員10人以上で、「アットホームな会社です。」と書かれていたら、やはりそれはブラック企業です。
その企業の面接を受けて、「アットホームな会社です。と書かれていましたが、どのような点ですか?」
と、質問してみましょう。
「週に一回は、夕食会に言っています。社員は、遠慮なく、何でも話すことが出来ます。」
などと、答えが返ってきたら、早々に面接を切り上げ、帰ってきましょう。