近年は過労死やストレスによる自殺なんかも問題になったことを背景に働き方改革が叫ばれています。しかし一方でこの現代社会においても、依然としてブラック企業が存在しているのも事実です。同じ日本国に存在しているにも関わらず「ブラック企業」と批判される企業がいつまでたってもなくならず、生まれ続けるのは何故でしょうか。今回は「ブラック企業が生まれる4つの理由」を解説します。

ブラック企業と感じる尺度が人により違う

まずは、必ずしも企業や経済の問題ではないところから敢えて説明します。ブラック企業と一般的に言われますが、そうよばれる上で明確な基準があるわけではありません。一般的に過労死者、自殺者などが多く出れば広くブラック企業の扱いを受けますが、それだって雇用者の耐性により、たまたま過労死があまりない企業だってあるかもしれません。

給与であれば「安すぎる」と感じる基準は完全に人それぞれですし、残業時間だって、月100時間くらいでも頑張る人もいれば、残業自体がNGであるべきと感じている人もいます。もっといえば、給与を基準にブラックかどうか考えている人、労働時間を、福利厚生を、やめる社員の数を、パワハラ上司を、と、企業をブラックかどうか判断する上での尺度やその程度は千差万別なのです。

このような感受性の違いのなかでブラック企業が生まれていることは、先に認識しておくべきだと考えております。言い換えれば誰かがホワイト企業だと感じている企業も、人によってはブラック企業だと感じるかもしれないのです。

最初にこのポイントをあげた理由は、これにより、究極的には「ブラック企業はなくならない」とも言えるからです。日本の全国民が満足する給与、労働の質、福利厚生を維持しながらしっかり利益を生み出す、そんな企業100%の世界は存在し得ないでしょう。もちろんブラック企業を減らす取り組み、また、経営者が働き方改革を断行する意義は大きいですが、根底にはこのような根深い問題があることも、また認識しなければなりません。

産業の構造的問題

最初の理由のその次に企業にとってブラック化を防ぎにくい理由としては、この産業構造の問題があります。業種により、その業種に属する企業の利益の出し方や利益のだしやすさには大きく差があります。規制が強いのであまり無理しなくても安定利益が出る業種、商品差別化が難しく、低価格化戦略をとらざるを得ない業種、業種により様々です。

そしてこのうち、「利益を出すのが構造的に難しい業種」は、常に厳しいコストカットの圧力がその業種に属する企業全体にかかっているといえます。その業種に属している時点で、少々無理をしないと利益がでない状況となっているわけです。

するとその業種の企業はコストカットに企業努力を注ぐわけですが、その際はもちろん人にかけるコスト、人件費だって削られることになります。賃金をできるだけおさえ、少人数で回そうとします。そうすれば、労働者から見れば低賃金で労働時間の長い労働環境ができあがりますので、ブラック企業になってしまうわけです。

この問題でブラック企業になっている場合も、改善は一企業努力では難しいことが多いです。産業のルールや常識をくつがえし、「価格競争ではない」環境をつくらなければなりません。時にはそうした取り組みに成功するすばらしい企業もありますが、一般的には政府などが介入して規制やルールを整備しなければその業種のブラック企業はなくならないでしょう。企業自身での改善が難しいからこそ、この理由で発生するブラック企業もなかなか無くならないといえます。

企業内によりブラック度合いに差がでている

一般的にブラック企業はたとえその中の一部がブラック化していたとしても、企業全体がブラック企業であるかのように扱われます。自殺者なんて一部署で一人でもだしたら、その企業はブラック企業のようになりますし、一部署、一社員が労働問題で訴訟など起こした場合も同様です。

この点を考えたとき「社内の労働条件の著しい不均衡により、ブラック企業が生まれる」ということが考えられます。例えば部署Aは残業が殆どないのに、部署Bでは昼夜問わず働かなければならない、といったこと、あらゆる企業でおこっていることです。

この場合複雑なのは、部署同士の相互作用により不均衡が生まれていることがあることです。
例えば上記で部署Aのレポーティングをもって部署Bが作業可能になる仕事があったとします。この場合、部署Aが怠惰で、或いは残業を減らすため、レポーティングが遅いために、部署Bが急に対応しなければならないため、結果的に残業が生じているというような状況です。どの企業も多かれ少なかれこうした状況にはなっているのでしょうが、その程度が大きくなると、ブラック部署が発生し、その企業がブラックしてしまうのです。

さらに複雑なのは、この場合、「部署Aの社員が怠惰なのが問題なのか、単純に部署Aもしくは部署Bのリソース不足が原因なのか」判断がつきにくく、またこのどちらであるかにより解消方法が変わってくるからです。前者であれば原因はある程度部署Aの社員にあり、一方で企業には教育、研修不足といった問題があります。後者では企業のリソース配分の失敗が問題で、こちらはほぼほぼ企業に原因がある、といえます。
いずれにしても一定程度その企業に問題があるのは確かですが、その原因により企業の問題の根深さと解決策が変わってきます。

企業カルチャーの問題

最後はほぼ完全に企業に原因がある場合を説明します。端的に言うと企業カルチャーとして労働者を低賃金で無理に働かせるという「ブラック企業」カルチャーが根付いていると言うパターンです。その場合、誰がそのカルチャーを形成しているのかは様々です。一番多いのはオーナーです。特に非上場のオーナー経営企業なんかだと、オーナー自身が労働者は無理をさせるものだと考えていて、ブラック企業にしてしまっているという例です。

ほかに中堅〜シニアの管理職クラスが原因ということもあります。「オレは厳しい環境で頑張ってきたからお前も頑張れ」という機運が上司から若手へと脈々と受け継がれてしまうということです。

最後に若手自身がブラック化させている場合だってあります。「残業上等、休日出勤上等」で社員みんなが長時間働けば、その企業は労働時間の長いブラック企業にいつのまにかなってしまうのです。
この場合、企業自信に問題があるのは確かですが、「誰が諸悪の根元か」により、企業が取り組むべきポイントはことなります。オーナーが原因である場合は、もう社長を交代させるか、株式を公開して上場させる他ないのですが。上場させれば、投資家の目が企業の規律を守らせますのでブラック度は改善することでしょう。

 

まとめ

 

このように、ブラック企業が生まれる理由は大きく4つあります。もちろん企業側に大いに問題があることが多いのは確かなのですが、必ずしも一企業努力だけではどうにもならないポイントがあるのも確かです。
一度ブラック企業と批判されればその企業自体ばかりがクローズアップされて批判されがちです。しかし、ここにあげた理由①や理由②のように「企業の外に原因がある場合もある」という観点を念頭に置いて取り組まなければ、ブラック企業を減らすことはできないでしょう。