企業に勤める社員の自殺のニュースが世間を騒がしているのを目にする機会が増えている。政治の世界でも「働き方改革」など個人の働き方が問題視されている中、自分の職場が一般的な基準に抵触していることを知らずに働いている方も多いかもしれない。
「一般的な基準」とは労働基準法等に定められる労働基準であり、労働時間や残業時間、また、不払い残業の禁止等の労働規則が定められている。また、各法人がこの基準を順守するように監督している省庁が厚生労働省である。

厚生労働省によるブラック企業の取り締まりとは

2013年8月の厚生労働省の報道発表において、厚生労働省が若者の「使い捨て」が疑われる企業等への取り組みを強化するとして、ブラック企業の取り締まりをスタートさせた。(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000014323.html
また、同じく、厚生労働省のホームページによると、ブラック企業とは以下のような企業である。

【以下、厚生労働省HPより引用】(Q&A 全般:「ブラック企業」ってどんな会社なの?)
一般的な特徴として、
① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど、企業全体の
コンプライアンス意識が低い
③ このような状況下で労働者に対し過度の選別
を行う

皆さんの職場が、①~③のいづれかの行為が行われている職場であればブラック企業である可能性があり、厚生労働省へ通報・相談することが可能です。

労働時間についての決まり

ブラック企業と聞いてまず皆さんが思い浮かべるのは前項にも挙げた「労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す」企業でしょう。
皆さんは36協定をご存じでしょうか。労働基準法三十六条をもとに策定された「時間外・休日労働に関する協定届」が正式名ですが、この規定に労働時間や残業時間についての規定が定められています。36協定の最も基本的な規則は以下です
・労働者は法定労働時間(1日8時間1週40時間)を超えて労働させる場合や、休日労働をさせる場合には、あらかじめ労働組合と使用者で書面による協定を締結しなければならない。
この協議に基づき労働者は時間外可能ですが、協定を締結すれば何時間でも時間外労働出来るわけではありません。労働時間を延長できる限度は以下のように定められています
・1週間 15時間
・2週間 27時間
・4週間 43時間
・1カ月 45時間
・2カ月 81時間
・3カ月 120時間
・1年間 360時間

この労働時間を超えて残業したい場合は、特別条項付きの36協定届を届け出る必要があり、この届は年間6回まで提出することが出来、連続した月で提出することはできません。なお、上限を超える場合は割増賃金が発生することまで規定されています。
さて、仮にある会社の社員が80時間を超える残業を3カ月させたとすると、上記の法令に違反している可能性が高いと言えます。このような場合は、以下の手続きに従い、厚生労働省へ相談されたほうが良いかもしれません。

厚生労働省への通報方法とその後の措置

最も確実な方法は、各府庁の厚生労働省の窓口へ直接訪問し、調査の約束を取り付けることです。またメール・電話で通報することもできます。この方法は24時間いつでも実行可能であるため、時間がない場合はこの方法を使いましょう。

【厚生労働省窓口】
・URL
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/mail_madoguchi.html

通報後については、労働基準監督署から今後の働き方などについてアドバイスがもらえる他、調査員が会社の担当者・労働者・帳簿などをチェックし違法性があれば、改善するように勧告し、従わなければ、法的措置に出ることになります。
この労働基準監督署からの立件事案は全国で毎年1000件近くに上っており、労働監督署ならびに確報詩人の対応は以下のような流れとなります。

・電話連絡または、連絡なく突然来訪する
・以下資料を監査資料として提出を求められる
-就業規則、他の規定類、賃金規定
-時間外労働や休日労働に関する協定届
-直近半年のタイムカードや業務月報
-従業員の名簿
-雇用書の控え
-社員の健康診断の結果
-安全衛生管理体制や関連する会議の記録
-社員へのストレスチェック問診の結果

・問題が発見された場合は以下の文書が労働監督署から発行されることになります
明らかに法令違反な場合: 是正勧告書
法令違反かどうか判断できない場合:指導票

・労働監督署から受領したこれらの文書について、期日以内に是正したことを報告するための以下の文書を提出する必要があります
是正勧告書 ⇒ 是正報告書
指導票   ⇒ 改善報告書

なお、この勧告に従わない場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

パワーハラスメント等の違反について

ここまでは、労働基準法違反などの法令違反の際の対応について記載しましたが、
パワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い場合もブラック企業と呼ぶことが出来ることは上記に記載したとおりです。
ただ、残念ながら、労働監督署はすべての労働についての問題を解決してくれるわけではありません。以下のような場合については取り扱ってくれる可能性は少ないです。

・いじめ、パワハラ、セクハラ、モラハラ
・男女差別

これらの問題については、労働監督署ではなく労働局に相談し、最終的には民事裁判等によって解決するほかありません。
ただし、相談したパワハラ等の背景に法令違反があると疑われる場合については労働局が労働監督賞に働きかける場合が大いにありえます
全国の労働局: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/pref.html

通報する際に気をつけるべきこと

通報は匿名でも出来ますが、通報を匿名で実施してしまうと、参考程度の情報としてしか扱われないケースがあるようです。
確実に調査をしてほしい場合は匿名ではなく実名で通報するようにしましょう。実名で通報したとしても、労働監督署は秘守義務があるため、名前が表に出ることはありません。

また、通報は代理人でも可能で、家族、弁護士などを代わりに立てることもできます。
また、通報する手段は3通りあることを説明しましたが、最も確実な方法は窓口へ直接行き、直接説明することです。
可能な限り、直接窓口へ行くようにしましょう。

この際、気をつけるべきことは、直接的な違法の証拠を必ず持っていくことです、その証拠がない限りは、まずは会社と直接交渉するように係の方から言われる可能性があります。具体的に証拠と成りえるのは以下のようなものです。

・賃金に関する訴え : 給与明細、雇用契約書、就業規則、賃金規定
・残業に関する訴え : タイムカード、シフト表、業務日報 等

最後に

昨今、現場企業では人手不足が叫ばれる中、上記のような違法な労働をさせてしまっている企業も急増しているという問題が浮き彫りになってきております。
皆様もこの一度自身の労働環境について上で説明させていただいたような基準に照らして、振り返ってみてはいかがでしょうか。