幼い子どもをもつ父親や母親が仕事をする上で切っても切れない関係、それが”保育所”です。核家族化が進み、子どもの面倒を地域で見る環境も薄れる昨今、女性の社会進出も相まって、保育に欠ける子どもが増加の傾向にあり、例年2、3月ごろには待機児童問題や”保育所に落ちた”などをSNSに書き込み、マスコミで取り上げられて問題が表面化しています。

そんな保育所で働く保育士さんたちはどのような思いで仕事をしているのでしょうか。

 

人数不足で労働環境が悪い

保育園は常に人数不足している園が多くあります。国の基準で決められた最低限必要な人数は確保できていても、その数が本当にギリギリでやっていることも多いです。
そのため保育士が妊娠しても育児休暇もまともに取ることができません。育児休暇を取りにくいためそのまま退職する保育士も少なくありません。そしてさらに園では人数不足に陥ってしまいます。

育児休暇が取りにくいということは、有給休暇はほぼ取れません。取ったらだめとは言われないものの、いざ取ろうとすると保育士の人数が不足し園児の生活に支障をきたします。
残った保育士だけでお世話をするのは無理がきます。保育士も激務の中頑張っていると体を壊して病気になり仕事に急にこれなくなる人も出てくるようになります。

するとさらに人数不足に陥ってしまい、有給休暇を取れる状態ではありません。

保育士の資格を持っている人は世の中にとても多くいますが、すでに退職した人や育児休暇を取っている人が復帰しにくいという現状があります。園の方針や雰囲気で休みを取りやすい、取りにくいがあるようです。
働きやすい良心的な園でも、保育士に休みを積極的に取るよう指導している園がたくさんあります。

しかし有給休暇を取る予定にしていたら、急に保育士が熱が出たり体調不良などで休むことになり人数が不足するため、急遽呼び出されることがしょっちゅうあります。有給休暇をとっても1日取れたらいい方で、半休ということがよくあるため実際に休めたという感じがありません。

 

”保育士”の仕事に就きたいと思う若者たちと新卒者の意識のギャップ

保育士は、都道府県知事が指定をする国家資格です。保育士の資格を有する多くの人は、専門学校又は2年制の短期大学で実習を含む勉強をして、国家試験免除で資格が付与される選択をとるのが一般的です。実習の平均日数は1クールあたり平均14日間と短く(専門学校や短期大学、地域によって差があるかもしれません)、この間で吸収できるのは主に”楽しいこと”ぐらいなのです。

保育士という職業がどれだけ過密なスケジューリングで、身体をリフレッシュできない仕事だということを身をもって体験するには短期間すぎる日数なのです。この結果、「保育士=子どもたちと触れ合える楽しい仕事」という構図を描き持った新卒者たちが実際の職場でギャップに気づき、数年で辞めてしまうのです。

社会的地位の低さ

保育所を利用できる対象年齢は0才〜5才までと幅広く、それぞれの月齢や年齢によって獲得していく人間的資質も異なるため、相応の専門的知識が必要になります。また近年では、新生児や小児の治療技術が飛躍的に進化するに比例して、障害をもつ子どもたちの受け入れも増えており、障害の特性に応じた保育も求められるようになっています。

それなのに、保育士は、社会的に”子どもたちと遊ぶ仕事”と捉えられがちです。このほかに給与にも理由があるのかもしれません。保育所の保育士の給与財源は市区町村に収められる保育料から賄われています。保護者の所得に応じた応能負担で納められる保育料は、決して保育士を満足にさせる金額とは言えず、薄給になりやすい根本でもあります。

 

保育所の開所時間の長さ

女性の社会進出が進んだ昨今、女性が働くことのできる場所や場面も拡大しています。例えば、正規労働者であれば男性同様に残業しなければならない場面があったりもするかと思います。このほか、家計を助けるためにパートタイマーとして労働したり、夜間帯の飲食接客業に従事するなどがあります。

これに沿うようにして、保育所の開所時間も長くなり、厚生労働省告示では保育所は原則として11時間以上の開所を求められるまでになっています。
これに合わせて保育士は、早番や遅番、保育所によっては土曜日や日曜日も開所していますからシフトスケジュールを組み、いわゆる完全では無い週休二日制を求められるようになっています。

書類の多さ

保育所は、児童福祉法で規定する福祉施設の一種であり、保育所建物における子ども一人あたりの面積や資格を有する保育者の数など、細かく規定がなされています。これに合わせて、行政として求められる文書も多いのが現状です。

発達に遅れや支障の見られる子どもたちとそうでは無い子どもたちが融合して計画的に保育ができるよう、保育計画(保育士は、これを月案・週案・日案などと呼びます)を作成しなければならないほか、小学校に入学するときには保育所での生活の様子や家庭環境、学校の先生に求める配慮などを記載した書類も作成しなければなりません。
ここに記載したほかにも、連絡ノートなどなど保育士の手を煩わせる書類は山ほどあります。

昔ながらの保育

保育の基本は数十年前から変わりません。リズム遊びや合唱などなど、30代の方が幼少の頃に馴染みのあった遊びを今でも保育所では大切にしています。昔ながらが悪いという訳ではなくて、考え方が古いのです。妊娠や出産が入社順で決められていたり、園長への許可制であったりなど、最近話題になったことは氷山の一角であって、保育所の水面下ではまだまだ古い体質が根強く残っています。

ちなみに、昔ながらの反対語である「現代風の保育」とはどのようなものが挙げられるのかご紹介します。
子ども子育て新支援制度が内閣府主体となって進められた際に保育園と幼稚園の仕組みを融合した”認定こども園”制度が始まりました。幼稚園では、教育を主体として幼児期に求められる知性や礼儀などを園の方針に沿って保育しています。認定こども園では幼稚園と保育所の垣根を超えていますから、保育所でも教育的な指導を含む保育が提供されています。

スポーツ教室のコーチや指導者を招聘してお遊技場でスポーツ教室を開いたり、英会話教室の先生やネイティブスピーカーの現地人と英語で日常会話をしたりなど、専門職の誰かを読んで子どもたちに知識を提供する機会が増えています。この間に保育士が介入することは大変少なく、身体的には”楽”なのですが、保育士も余剰している専門的な知識を深めなければならず、保育士の間でも意見が別れているのが現状です。

 

給料が安く残業代がない

保育士の給料はとても安いです。無認可の園や幼稚園では給料が高いところもあるようですが、それでも社会全体でみると保育士の給料は平均給与と比べるとかなり低い方に入ります。

「保育士は子どもと遊んでいてお金がもらえるからいいよね」と言われることが時々あります。

しかし保育士は子どもの命を預かる大事な仕事です。給料の割に責任が重いと感じています。

園で何かあった時の最終責任は園や園長になるものの、それでも園児が小さいクラスは本当に大変です。
小さいクラスになると割り当てられる保育士の数も多くなるものの、泣いたりおむつ変えたり急にお熱が出たりとするとひとりでできることに限りがあります。

それでも子どもの成長をまじかに見られることはやりがいのある仕事ですが、それにしても給料が安すぎると思います。保育士になりたいけど給料が安いからと、保育士の免許はとっても保育士の仕事を選ばない人たちもたくさんいるのが現状です。

また園にもよるのかもしれませんが、残業代が出ない園が多いです。園は国からの補助金で賄われていてそれも十分とは言えないのだと思います。

保育士の働く時間は長く、園児が登園してからお迎えの時間まで最長で13時間あります。
シフトで交代で働きますが、それでも1日8時間ですむことはありません。保育士に欠員が出たり急な休みがあると1日フルに働かなくてはいけないことも多々あります。

保育士は園児のお世話だけでなく、製作の準備、運動会や参観日などの準備、お祭りやイベントなどの準備や対応など通常の業務以外にやることがたくさんあります。園児がお昼寝している時には保護者との連絡ノートを書いたり、おもらしした子のお世話や園の打ち合わせなどやることだらけで、通常の勤務時間内ではすべての仕事が終わりません。

園児がいる時は園児優先になるため、仕事が終わらず残業したり持ち帰って色々な物を準備したりというのは日常的に発生します。

残業代がきっちり支払われると保育士の給料が上がるためやる気にもつながりますが、働けば働くほど給料が下がるというのが実情です。
保育士の労働環境や労働条件は過酷です。

 

保護者対応

 

保育士は園の方針と保護者の直接の板挟みになります。保護者の方は大切なお子様を預けているので色々と言いたくなる気持ちはよく分かります。しかし園で決められていることは保育士にはどうにもならないことがたくさんあります。

保育士がどれだけ気を付けていてもけがをしてしまったり防ぎきれないアクシデントがあります。保育士が悪いわけではなくても保護者に謝らなくてはいけないこともあります。きちんと理解してい頂いている保護者ばかりではありません。

こちらに言われても困る、それは家でやってほしいと思うことを要求してくる保護者もいます。また園では家でやるという方針になっているため、それを保護者に伝えるとトラブルの元になることがあります。保育士にどうにもならない場合は、上の人が出てきて対応してくれますが、毎回そうはいきません。基本的には保育士が保護者とのやり取りを行うため、園と保護者の板挟みになる苦労があります。

保育士も精いっぱい仕事にあたっていますが、100%完全にできるわけではありません。些細なことでもクレームを言ってくる保護者の方もいて、それに対応する時間も精神も疲労します。

また保育士は、専門職の立場として助言や場合によっては教育をしなければなりません。ほんの少し発達が遅れていたり、ほかの子どもと自分の子どもが少しでも違うと、保護者は気が気ではありません。そんな場面で優しく声をかけるのが保育士の大事な仕事の一つなのです。

核家族化が進み、子どもを保育したことのない又は保育の方法や発達の仕組みを知らない保護者が増えていますから、わからなくて当然とも考えることができますが、クラスの子どもたちの保護者一人一人を相手にしていたら、身体が持ちません。

そのために、発達や障害についての文献をまとめた冊子を作成して保護者に配布したり、適宜に教室を開くなどして、保護者の知識や技術の平坦化を図らなければなりません。これらの準備は子どもたちが帰宅したあとに行いますから必然的に残業時間も増えてしまい、結果として保育士の身体的負担が募るばかりです。

まとめ

保育士の労働環境はブラックなのか? 答えはYesと言えるでしょう。

これまで述べてきましたように、保育士に求められる保育の技術や知識は時代とともに多様化しており、給与に見合わないような労働をしなければならないのが現状です。しかし、保育士という職業を志した者の多くは”子どもたちの笑顔を守りたい”、”子どもと触れ合う仕事がしたい”という気持ちを持って、大変な勉強や実習を乗り越えてきました。自分の頑張りがイコールとして子どもたちの保育に反映されている満足感は他の仕事では味わうことのできない部分です。特に年齢の若い保育士は皆、似たような感情を抱きながら仕事をしているのではないでしょうか。

過密なスケジュールで仕事をしていると新しい出会いに巡り会うことも少ないですし(仕事で知り合う男性はほとんど子どものお父さん=妻帯者ですから、手は出せません…)、プライベートを犠牲にせざるを得ない場面も出てくるでしょう。また、奇跡的に素晴らしい巡り合いで結婚ができたとしても、すぐに子どもを授かることは職場が許さないでしょうし、謎めいた年功序列制度もこれに付随してくるでしょう。

正職員の保育士として働いている皆さんが社会的に素晴らしい仕事として認知され、プライベートを満足できるだけの生活が送れるだけの給与を得て生活できる日を一日も早く願っています。