レストランやファミレス、また和食屋など様々なジャンルのお店がある飲食業界ですが、かつて牛丼屋や居酒屋のオペレーションが批判の対象となり「飲食業界はブラックである」という印象が広がりました。

実際のところ飲食業界の企業全てがブラック企業ということはありません。しかし、飲食業界はその業界の特性から厳しい労働環境になりやすい傾向を備えているのは確かです。厳しい労働環境を嫌う人からすれば、そうした側面を「ブラック」と感じる場合も多いです。

今回は筆者が経験した話を踏まえ、飲食業態からブラック企業が生まれやすい7つのポイントを説明します。逆に飲食業界で働くことを検討しているかたは、下記ポイントを我慢する覚悟をもつか、または下記ポイントが当てはまらない企業を見つけましょう。

ピーク時、忙しいわりに時給が低い

私が以前アルバイトとして働いていた大手の某居酒屋ですが、時給がほぼ最低賃金でした。そのわりに忙しく人手不足、キッチンだったのですが、いくつもの持ち場を一人でこなさなければならず、「このままの人数で回すのなら時給を上げてくれ」と毎日のように思っていました。

言っても無駄な事はわかっていましたので、店長などに言う事はありませんでしたが。大手の飲食店となると、所詮は雇われ店長ですので、時給を上げる権限など持っていないだろうし、そもそも店長が一番仕事が追い付かず大変そうだったので言うことが出来ませんでした。

店長の仕事が遅いとかではなく、やる事が多すぎるんです。過労死も他人事ではないな、と本気で思いました。時給を上げさえしてくれれば、人手不足も少しは解消すると思うのですが。

飲食業界には極端な高スキルな仕事と低スキルな仕事しかない

飲食業界は現場で働くスタッフが「極端な高スキル職」と「低スキル職」にわかれます。前者は一流クラスのお店のシェフや寿司屋、こだわった店のキッチンなどが当てはまります。ハイレベルな店の料理を提供するには厳しい修行が必要です。

そこは制度をどう仕切ったとしても、恐らく長期間、寝るまも惜しんで、客に料理を出しながらスキルアップしていくほかありません。大抵の人はこれを自ら志願してやっているとは思いますが、客観的にみれば長時間労働かつ修行中であれば賃金はさほど高くならない、職場となってしまいます。

また低スキルな仕事はチェーンファミレス店のキッチンやホールなどです。とくに専門性を積んでいない学生でもできてしまう仕事であるので、ある程度誰でもできてしまう仕事であるのは明白です。

それは何を意味するかというと、そんな仕事に高い賃金が払われることはないということです。こうした仕事はどうしても最低賃金に近い水準での労働となりますので、賃金が上がることを見込むのが難しく、結果的に「飲食は低賃金」の構造を作りやすくなってしまうのです。

 

誰でも受かるという罠

他にもかけもちでアルバイトをしていた私はシフトに入れない日が多く、更には飲食未経験でコミュニケーション力にも不安があったのですがキッチンで即採用になりました。

研修一日目にはかなりの人数で研修を受けていたのですが、日を追うごとに人数が減っていきました。私があまり人と仲良くするタイプではないので、本当の理由はわかりませんが、おそらく本社の方々の監視の目でしょうね。

言い方は悪いですが、本社のヤクザのような風貌の方がとても怖かったです。印象としては、とりあえず誰でも採用しておいて、圧力をかけて上からの指示に従順な人たちだけが残り、奴隷の様に働かせる。といった感じでしょうか。かなり言い方は悪いですが、間違ってはいない気がします。

飲食業界は労働時間を短くするのが難しい

飲食店の営業時間を考えてみましょう。ファミレスなんかは10時から深夜まで、下手をすると24時間営業です。実際に私が働いていた職場では24時間営業のチェーン店でした。

今の時代24時間営業の店が数多くありそれが当たり前に感じるかもしれませんが、これはつまり必ず誰かが深夜勤務しなければならないことを意味します。それなのに朝は遅くても10時には店を開けなければいけない、しかも低スキル職だと高い賃金を払う余裕はないということになります。

もちろん分業で一人一人の労働時間をコントロールするのでしょうが、そうすると一人一人の賃金は当然さらに下がります。これで労働環境をよくするのは至難の技なのです。長時間労働なし、高賃金の両取りには高度なマネジメントと高い業績が必須になります。

一方高スキル系の店ですと営業時間が短い場合もあります。夕方からの営業で、夜9時には閉店、そんな店もあるにはありますね。しかし、これで運営ができる店はハイレベルな料理を出すことが必須になります。短時間で利益を出すんですから、ファミレスと同じクオリティの商品で勝てるわけがありません。

するとどうなるかと言いますと、ハイレベルな料理を提供するために長い仕込みや準備が必要になります。こうした店は営業時間外の労働が長いのです。この営業時間外の部分のために長時間労働となるのは言うまでもないですが、賃金が発生していればまだ正常かもしれません。

この時間は一切の売り上げが出ないわけですから、雇用する側としては「サービス残業にしたい」時間になってしまいます。もちろん正当な賃金を払うのが企業の義務だといえばそれは正しく、全くそのとおりなのですが、1円も売り上げが発生していないのにどこから賃金を支払うのかという企業の苦難もまた然りですよね。

結局一方の企業はサービス残業状態でブラック、他方はこの時間も賃金出すけど、総量で出せる賃金に限界があるので時間あたりでは低賃金となりブラックとなる可能性があります。それを避けられるのは一部の高収益なお店だけに限られます。

飲食業界はコスト競争に陥りやすい

飲食業界はすでに低コスト店はいうまでもなく熾烈なコスト競争の最中ですが、そもそもコスト競争になりやすい業態であると言えます。
人は高い食べ物を食べなくても生きていけます。高い食べ物は世界に「今は必要」とされて成り立っていますが、必須ではないのです。

これは非常に飲食業界を脆くしているポイントです。人々の興味がなくなれば、または安くても似た味が作れるようになれば、はたまた人々のお金がなくなれば簡単に安売り競争に突入するリスクがあります。

もし、人々の生活に必須で独自性高いものを保有していればそのスキルを守ることで利益率を維持し、高スキルの社員を良い労働環境で雇うことができますが、飲食業界は構造的にそれが難しくなっていると言えます。
一時は人気だったので、ブームだったので高い値段でも売れていたメニューが陳腐化して安売りせざるを得なくなった何て話はしばしば聞きます。或いは人々の人気は変わらずとも、材料が値崩れしていつのまにか価格競争に突入していたなんてこともありますね。

材料の値崩れは本来人件費とは別の世界なのですが、企業はコストの中の人件費率を気にしますので、他のコストが下がると一般的に人件費にも下方圧力がかかってしまうのです。コストや売り上げに占める人件費は大学で経営や会計をやってても出てくる概念でフォーマルなものですが、こうしたところに弊害が出てしまう考え方でもあります。

安売り競争に突入したとき、削るコストの筆頭は人件費です。企業の心理としては、誰かが働いてくれさえすればいいような仕事は「誰かが働いてくれる最低限の賃金」しか出したくありません。それが賃金を可能なかぎり下げなければならない仕事です。
そんなプレッシャーがひとたびかかれば、賃金は上がりようもありません。

いまの雇用条件でやりたがる人もいる

最後はブラックと感じるかどうかは人それぞれというところにつきますが、要はいまある雇用条件でもやりたがる、ブラックだと思わない人も一定数いるということです。

深夜残業オンパレードのアルバイトでも割増時給がでるからいい、一流シェフになりたいのだから睡眠時間を削って修行は当たり前だ、そんな風に考えている人が一定数いて、それらの人により雇用市場が成り立っているから、いまの長時間労働や低賃金が成立してしまっているのです。

ところが「納得している人がやってるんだからブラックじゃない」ともいいきれません。労働環境をよく知らずに入り一部の人が声をあげれば、また「大丈夫」なつもりの人が頑張りすぎて倒れたら、それはもうブラック企業ということになってしまいます。ケースバイケースではありますが、こういうときは批判の声の方が強くなりますので、一定数の人がブラックだと思えばそれはもうブラック企業なのです。

 

ブラックではない店もある

大手ではありませんが、中規模くらいの飲食店に勤めた事もあります。前述の某居酒屋とは比べものにならない程、良い人が多かったです。人付き合いが苦手な私でもすぐに仲良くなれた程です。環境って大事だなと改めて思いました。優しさは伝染しますからね。

ここの飲食店は人手不足などは一切感じられず、みなさん、数年働いていると言っていました。環境がいいと長く勤められますし、人手が不足する事もなく、助け合いも出来る居心地のよい職場でした。

逆にブラックだと長く続く人が居らず、マニュアルが安定していない為に探り探り仕事をしなければならず、余裕がなくなってしまう。助け合いどころではない為、従業員同士の関係もよくはならず、不の連鎖です。これを書いていて、ブラックな理由は給料だけではないなと改めて感じました。

忙しい時間帯もありましたが、時給について愚痴を言うような事は一切ありませんでしたね。これ程の恵まれた環境で働かせてもらえているのだからこのくらいの時給でもまぁいいか、といった感覚でした。そう考えれば、いくら時給は高くともブラックな職場で働きたくはありませんね。時給が安くてもよい環境で働きたいと思います。

まとめ

冒頭にかいたとおり、飲食業界でもホワイト企業になるように徹底している企業はたくさんあります。それは誤解しないようにしましょう。しかし、ここに示したように、飲食業界の構造自体がブラック企業化させやすいという側面もやはりあります。

一方それでも低スキルでも働けるから、もしくは独自の料理で人々を喜ばせたいといったような様々な理由から飲食業界を志す人もやはりいます。飲食業界で仕事をすることを考えている方はそうした側面をしっかり認識した上で、自分が耐えられるベストな職場をしっかり見極めるようにしましょう。