仕事をしていると、ミスをしたりノルマを達成できないということは、どうしても起こってしまいます。ミスやノルマ未達成で叱られるのは、誰しもつらいものですよね。避けることができればどんなにいいか・・・。

しかし、ミスやノルマ未達成を理由に、怒られるのはともかく、自腹で補填するよう上司に命令されるのはどうでしょう?そんなのはお断りしたいもの。

しかし、そういった指示を出す上司は意外と多いようです。これって普通なの?それともうちの会社がブラックなの?

今回は仕事のミスや達成できなかったノルマを自腹で払わせる会社はブラックかどうか、説明します。

従業員は法律上、損失の補填をしなくてもよい

仕事というのは生活を成り立たせるためにやらなければならないことです。

例えば専業主婦の家事労働であれば報酬は発生しませんが、パートナーを支えてその収入を安定させるために行われる大切な仕事です。

そして、労働者は得た報酬で生活を成り立たせますし、そこで使われたお金が社会を成り立たせています。

しかし、ミスやノルマを自腹で支払わせる契約は、労働者の生活を直接的に圧迫します

戦前はこうした労働契約によって生活を圧迫された労働者がやむに已まれず雇用主に給与を前借りすることが多く、その借金が払いきれないがためにその会社から退職することが難しくなったり、さらにひどい場合には身体の拘束を伴うような劣悪な環境課での労働を強いられることも多くありました。

 

結論を言うと、基本的に従業員がミスやノルマ未達成による損失を自腹で補填する必要はありません。これは労働基準法で、以下のように定められています。

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。(前借金相殺の禁止)

つまり会社は、雇用契約でノルマを定めるなどして、ノルマの未達成やミスの補填をすることを約束させてはいけない、ということです。

ですから、どの会社に勤めるにあたっても、働き始める前から、従業員がミスやノルマの補填をする必要が無いということが、法律で決まっています。

本来であれば、雇用契約書にこうした内容が書いてあれば、そこにサインをせずに逃げるという手段をとるのが一番いいのですが・・・。

自腹の補填が会社内で暗黙の了解になっているケースがほとんどですよね。

それでも、法律に違反している会社の方が間違っており、こうした命令をしてくる会社は100%ブラックです。というより、法律違反している犯罪企業です。

応じる必要はありません。可能であれば会話内容の録音やメールのやり取り等を保存して、労働基準監督署に通報しましょう。

 

売れなかったりミスが多い職場は会社に改善の責任があるのにそれを労働者に転嫁している

作業上のミス削減や効率の良い販売計画などは会社が考えなければならない重要な事項です。

世界のトヨタ自動車は工場においていかにミスを起こしにくい状況を作るかに心を砕いていますし、販売においても世界の年間販売台数1000万台を達成していますが、どの地域はどんな車種が売れるのか、ターゲットは誰で、どんなチャンネルで販売すればターゲットに届きやすいのかといったマーケティングも徹底して取り組んでいます。

かたや、ミスやノルマを社員にかぶってもらう企業は、企業が当然するべき改善やマーケティングに取り組む姿勢がないばかりでなく、自らの怠慢を社員にかぶせようとしており、ブラック企業によくみられる搾取が行われています。

経営層は自分たちの私的な利益を目的に社員を搾取していると言われても反論できないと思います。

会社は生活に必要なものや社会に必要なものを生産することを通じて労働者に生活に必要な収入を与え、その収入が商品の購入に充てられて社会が成り立ちます。

けれどもブラック企業は社長他少数の役員や重役だけに利益を集中させて彼らの懐がいかに豊かになるかということだけを考えています。短期的には労働者の生活が苦しいということで終わるかもしれませんが、ブラック企業が多く存在してしまえば社会全体にまわるお金が減少してしまいます。

また、労働者が得た収入で日々の生活を送るだけでなく、こどもをつくり、そして教育します。そのこどもたちが次の世代で仕事をして社会を作っていきます。

こどもの人数が多い方が次の世代で稼ぐ人が多い豊かな社会になりますし、教育の機会を与えられたこどもが多い方が一人当たりの生産性が高い社会が見込まれます。

ブラック企業は、そんな社会のために必要なお金を労働者から搾取して自分たちの懐に入れてしまうという意味合いでは、社会に対して害悪をまき散らしていると言っても良いでしょう。

そもそもミスやノルマの未達成は100%防げない

人間は機械ではありませんから、どんなに気をつけていてもうっかりしていたり、体調や状況が悪かったりして、ミスをすることがあります。

そうした場合、従業員の怠慢が原因ではないわけです。

機械を動かしていて、何か具合が悪ければ、原因を直せばまた元通りに動くかもしれません。しかし、人間はいつでも同じ体調で同じように動くことはできません。

仕事へのモチベーションの違いや私生活の事情など、コンディションは十人十色です。

人を雇う以上、そうした条件はきちんと考慮する必要があります。従業員のミスや、ノルマ未達成率も考慮して、経営予算を組むのは会社の責任です。

立ち上げて間もないような会社ならともかく、何年も経営していて従業員も100人以上いるような、経営が安定している会社なら、その程度の損失を補填できる力が無いということはほぼありません。

そもそも従業員が怠けていない場合は、怒られることも理不尽なのですが、怒られたらとりあえず謝って済ませることもできるので、まあ仕方ない、で済ませることもできるでしょう。

ですが、自腹での補填を求められると、実害になります。生活をするために仕事をしているのに、その仕事が原因で生活に影響が出るのでは本末転倒です。

損失の補填は会社の責任となるので、応じる義務はないのです。

 

労働者の心を壊してしまう

誰でも自腹を切って必要でもない自社製品を購入したり、ミスの賠償をしたりしたくはありません。

また、誰しも「それって、おかしいんじゃない?」と心の中で感じるのではないでしょうか。少なくとも「喜んで!」と自腹を切る人はほとんどいないはずです。

でも、会社側としたら「自腹を切りたくありません」といわれて「はい。そうですか。」とは言いません。

でも、会社側も理屈ではおかしいことが分かっていますので、労働者側を言いくるめるというよりは、無理やりいうことを聞かせようと思うのではないかと思います。

そうした場合に、当然と言えますがパワハラが発生します。

また、長年こうした状況を続けてきているブラック企業はパワハラを行っても周囲の社員が「そういうものだ」と感じてしまっている場合があります。一番恐ろしいのはこういう場合です。

例えば、新人で入社してきて自爆営業をさせられたとします。嫌ですけど上司はとても怖くて逆らうことができません。それどころか、少しでも嫌そうなそぶりを見せようものなら人格まで否定されるほど怒られます。

そんな状況で、周囲の先輩が正常な反応を示していれば、その上司がおかしいとわかります。

でも、周囲も「そんなもんだ」と思ってみてみぬふりをしていたり、ひどい場合は上司に加勢する先輩がいたりして、そんな状況では新入社員も「我慢するのが当然」と思い込まされてしまうでしょう。

もし、そんな状況で心を壊されてしまったら社会復帰には多くの時間と費用が掛かります。労働者本人の負担も増えますが、治療には健康保険が使われます。

当然私たちの社会保険料がそこに使われることになります。ただでさえ苦しい健康保険の財政がさらに圧迫されれば、保険料を値上げしたり、または経費削減による医療の質の低下を招きかねません。

また、心を壊された労働者が増えれば増えるほど世の中から働き手は減っていきます。社会保険料を負担する働き手が減ってしまうということです。

こうした意味でも、社会に対しては害悪をまき散らしていると言えると思います。

 

防げるミスは防ぐべき

とはいえ、なんでも会社の責任にできるわけではありません。

人間はうっかりすることもありますが、同時に学習もできる生き物です。なので、同じミスを繰り返さない、ミスをしないような工夫や仕組みで防ぐ、という努力ができます。

例えば、うっかり目覚まし時計を設定し忘れて遅刻してしまったら、寝る前に必ず目覚まし時計に触る習慣を付けたり、家の壁にメモを貼ったりするなどの工夫をしますよね。

そうした工夫をせずに何度も遅刻していては、周りに迷惑が掛かりますし、同じ条件で働いている同僚達には理不尽に感じるでしょう。

また、ルールを守らずに起こるミスも従業員の責任と言えます。

例えば飲食店の店員さんが、転んで食器を割ったとしましょう。

床が濡れていたり、足をくじいてしまったという場合なら、店員さんが100%悪いとは言えません。床が濡れたらすぐに拭くルールに変えるなど、会社が対策を講じて防ぐことができます。

しかし、店員さんがルールに反して、靴のかかとを踏んでいたために転んだならどうでしょう。会社が定めたルールを守っていない従業員が悪い、という結論になりますよね。

一度で直せばともかく、いつまでも直さず何度も食器を割ることがあると、経費がたくさんかかり、やがて会社の経営も厳しくなってしまいます。

そうなると、あなたが食器代を支払ってくださいと言われても、強く言い返せなくなってしまうのではないでしょうか。

このように、与えられた仕事をスムーズにこなせるよう努力をするのは、雇われている従業員の責任となります。従業員が努力をしないでミスをすることは、会社の不利益になるのです。

ミスやノルマの補填をしろと言われて、もし、自分は他の従業員並みかそれ以上に一生懸命やっている、と堂々と言えるような働き方をしていれば、徹底的に戦いましょう。

ですが、同僚や先輩からそのように評価されていないようであれば、反論するのが難しいかもしれません。

従業員がその仕事に向いていないのでは

また、同じミスを何度も繰り返したり、ノルマをずっと達成できない理由が、従業員の向き不向きにある可能性も考えられます。

例えば接客業の人で、いつも声が小さいとクレームをもらう従業員は、やる気が無いから声が小さいのではなく、地声が小さくてどんなに頑張ってもお客さんに届く声が出せないだけかも知れません。

もしくは、営業マンでいつもノルマを達成できないのは、あまり社交的でない性格なのに、営業部に配属されてしまった、という可能性もあります。

元々の性格や身体の特徴は、そう簡単に変えられるものではないですよね。

そうした自身の性質を考えずにその仕事を選んだのであれば、多少は従業員の努力が足りないだとか、仕事選びの時に向いてないことに気づくべきだとか、責められても仕方ないかもしれません。

ですが、新卒入社で配属先が勝手に決められたり、求人広告と実際の条件が違った、というケースもあるでしょう。

理由が何であれ、従業員の努力や工夫だけで解決できないのであれば、ミスやノルマ未達成を責めるのは得策ではありません。

そうした場合は、部署を異動させるなどしてよりその従業員に適した仕事を与えた方が、会社の利益にすぐつながると言えるでしょう。

もし、いつもミスやノルマの未達成で叱られていて、自分が今の仕事に向いていないと感じている、もしくは周りに向いていないと言われているようであれば、上記のように説明し、異動を申し出ることや、転職も検討してみてください。

まとめ

このように、従業員にミスやノルマを自腹で補填させることは、法律で禁止されており、そうしたことを命じる企業はブラック企業です。

すでに支払っていて、払った証拠が残っていない場合は、どうにもなりません。

しかし、例えば高額を振り込み等で支払っていたり、払わされた時の会話が残っている場合は、労働基準監督署に申し出ればその会社に是正勧告が出される可能性があります。

また、高額の場合は弁護士に相談するなどすれば、取り戻せる可能性もあります。

まだこうした命令を受けたことが無い場合は、今後このような命令に応じる必要が無いと覚えておきましょう。