介護業界を渡り歩いてきた筆者が、ブラック企業の特徴についてお教えします。
介護業界を、転職、異動、出向で、19年に渡りいくつもの業種を経験してきました。
ブラック企業と呼ばれる法人は、はっきり言って多いです。
まず、大前提になっているのが、職員を「使い捨て」と考えているかどうかです。
介護業界に夢を託しておられる方には申し訳ないですが、8割がブラック企業です。
つまり、8割の法人が、職員は「使い捨て」だと考えているのです。

 

登録ヘルパーという存在について

ホームヘルプ事業所について考えてみましょう。
一番多い、ブラック企業パターンが、正職員は一人。あとは全員、「登録ヘルパー」という事業所です。
例えば、登録ヘルパーさんは、60分の「身体介護」に入れば、時給2,000円です。
ただし、交通費は含まれています。

60分の生活援助に入れば、時給1,200円で、交通費込みです。
そうやって、一週間にそこそこの回数、ケアに入れば、週間38,400円。一か月、15万円余り。
そこそこの収入になります。

しかし、60分の身体介護に入っていた利用者様が、一か月以上入院されれば、その方のケアが無くなり、一か月57,000円程に激減します。
管理者としては、その方がいつ退院してみえるか分かりませんので、その方の時間枠は空けておかなくてはならないのです。
お分りでしょうか。
企業の立場としては、そんな博打みたいな仕事に、正社員や、パートタイマーの、時給で働く社員は充てられないのです。
そこで、登録ヘルパーという採用方法が横行するのです。

ただ、これは企業の責任とは言い切れません。
こんな仕組みの介護保険制度を作った国の責任なのです。
つまり、国が介護業界をブラック企業に導いているのです。
介護保険制度が破綻しないように。

 

福祉用具事業所の問題

 

次に、福祉用具事業所についてみていきましょう。
福祉用具のメインは、レンタル福祉用具でした。
介護保険が始まった平成12年当時、「要介護1」や「要支援」の方でも、電動ベッドのレンタルが介護保険を利用し1割負担で可能でした。
同じく、車いすも。
車椅子には、電動車椅子も含まれ、「セニアカー」と呼ばれる、時速6キロ未満の歩行者扱い、免許不要の車椅子が、多くの要介護1や、要支援の方が利用されていました。

しかし、国は介護保険制度の改定で、電動ベッドは、原則要介護2以上の利用者のみ、車椅子も同じ。
そうした制度改定を行いました。
結果として、電動車椅子「セニアカー」を返却せざる得ない方が続出。
電動ベッドも、多数の方が返却されました。

その結果、福祉用具事業所の倉庫には、電動ベッドと、電動車椅子が、山のように積まれる事態になったのです。
一般的に、2年以上レンタルで借りて頂いて、初めて元のとれる商品です。
それが、ものの一年ぐらいで、数えきれないほど返却されてきたのです。
当然のごとく、福祉用具事業所の赤字は、莫大なものになりました。

それ以降、その赤字を取り戻すために、福祉用具専門相談員にも、厳しいノルマがかけられるようになったのです。
ホームヘルプ事業所と同じですね。
国の介護保険制度設計が、甘すぎたのです。
こうして、福祉用具事業所の多くも、ブラック企業化せざるえませんでした。

 

デイサービスの問題

 

次はデイサービスです。
介護保険創設当初は、利用者様がデイサービスに通う回数は、自由に決めることが出来ました。
しかし、介護保険制度改定の「新予防給付」創設により、要支援1と要支援2の方という、軽度の利用者様は、デイサービスに通える回数を、一律、要支援1は週一回、要支援2は週二回と決められたのです。
国は、言い訳をしていました。
回数を制限はしていない。支払われる介護報酬を一律に統一しただけだ。
笑える言い訳ですよね。
こうして、デイサービスも、利用者が減り、ブラック企業化していきました。

そこで、生き残りをかけた事業者は、介護保険を使わずにわずかな実費を支払えば、一晩泊めてくれる、「お泊りデイサービス」というものを始めました。
介護保険を使わず、かつリーズナブルな価格で泊まっていただこうと思うと、しわ寄せは当然職員にいってしまいます。
夜勤の職員は一人。部屋に関する規定はありませんので、6畳に6人の利用者様が雑魚寝という事態も発生していました。
そうしないと、一人の職員では見守り出来ないのです。
決して、事業所を責められるものではありませんでした。

それでも、ニーズはかなりあり、多くの高齢者が、一晩どころではなく、何週間とそのデイサービスに泊まっていました。
つまり、「なんちゃってショートスティ」の出来上がりです。
これも、作ったのは国の責任ですね。

小規模多機能型サービスについて

 

そうして、国が制度化したサービスが、「小規模多機能型」サービスです。
お泊りデイサービスの真似をして、その事業所に登録した利用者様は、その事業所の職員のホームヘルプサービスを受けられ、日中はデイサービスとして利用し、同じ顔ぶれの職員が、泊まりの夜勤も行う。
一見すると、顔なじみの職員が、ホームヘルプ、デイサービス、ショートスティの各サービスを行ってくれるので、非常に良いように感じますが、家族のニーズとは、かけ離れた制度でした。

まず、この事業所に登録すると、今まで使っていた、ホームヘルプ、デイサービス、ショートスティは使えなくなります。
使えるのは福祉用具レンタル事業所だけです。
そして、一か月の利用料は、定額制でした。

良いサービスに感じますが、家族からすると、今までの利用頻度からかけ離れたものになる可能性があるのです。
デイサービスを中心に利用していた方は、比較的利用しやすいサービスです。
しかし、ホームヘルプ中心だった方には、ほとんど職員に訪問する余裕が無くなりましたので、残念なサービスになりました。

そして、ショートスティを多用していた方にとっては、一か月にお泊りは何日までにしてくださいね、などと事業所から押し付けられ、納得できないものでした。
以前と同じぐらい泊まろうと思うと、結構値段の張る、一泊の個室料金を払わねばなりませんでした。
お泊りデイサービスが雑魚寝をさせていたという批判をかわすために、あらたな小規模多機能型施設は、全室個室でないと認可されなかったのです。

ここで、夜勤者にも不都合が起こってきます。
基本、一人の職員が夜勤をしますので、もし9人も個室に泊まっておられれば、その見守りなど出来るはずがありません。
転倒事故などが多発し、事業所は、赤外線センサーで、利用者の動きを見張れるシステムを導入したりして、予想外の出費で赤字経営になりました。
小規模多機能型施設で黒字が出たという話は聞いたことがありません。

国もそれをわかっていたはずで、特別養護老人ホームを認可する条件として、小規模多機能型施設を併設すること、としたことはその証拠と言えるでしょう。
ここも、ブラック企業にならざるを得ませんね。

 

 

まとめ

 

こうして、みてきた在宅系の事業所だけでも、ブラック企業にならざるを得ない企業が増えるのは当然のことだとお分りいただけたでしょうか。
国が、机上の空論で始めた介護保険制度が、実はそんなに甘いものではなく、設計当初の制度のまま進んでいけば、破綻してしまうとことに、厚生労働省が気付いていなかったはずはありません。
三年毎の制度改定で、厳しくしていけばなんとかなる。
そう考え、甘い制度設計を発表し、介護の世界のバラ色の未来を語った役人たちのつけを、今、ブラック企業と呼ばれながら、なんとか介護保険制度の中で生き抜いていく企業の涙ぐましい努力と、そんな企業に雇われて、こんなはずじゃなかったのに、と嘆いておられる職員の皆様にエールを送ります。