ネット通販全盛の時代、日本の全国各地に大型の物流倉庫が立ち並び、日々大量の洋服やファッション小物などが出荷されていきます。

メーカー1社が単独で自社のオリジナル商品を置いている倉庫もありますが、複数のメーカーの商品の在庫を持ち、1つの箱に入れて出荷する総合通販サイトのワンストップ・サービスが主流となって来ています。
一部自動化されていますが、物流倉庫のオペレーションを支えているのは主に入荷や出荷作業を担うアルバイトやパートの非正規雇用のスタッフである事は間違いありません。
では、物流業界が人手不足と言われている今、倉庫作業の労働環境はブラックなのでしょうか?

ブラック企業などの言葉は世間に定着しつつありますが、ブラックの定義は明確化されていません。ニュースなどで伝えられる内容から、概ね下記の特徴に当てはまる箇所が多いとブラックと判断されるようです。
そもそもどんな労働環境をブラックだと捉えるのでしょうか?

 

肉体的・精神的な苦痛

 

倉庫作業は限られた空間の中で単調な作業が続くのが特徴です。毎日決められた仕事をする毎日決められた仕事を同じ人間関係でする事に疑問を持たないのは最初だけ、継続して続けると肉体的・精神的に苦痛が生じます。

結果、倉庫作業が続かないケースがある、倉庫作業はブラックな印象が根付く事に繋がります。倉庫作業が続かない根本の原因の一つが顧客から預かった商品の保存をするのが業務であり、それをする為の準備が会社側に出来ていない事が挙げられます。

倉庫作業は常に身体的に危険が伴います。重い荷物を持つ、移動するの反復作業ですので、体に慢性的な異常が起きてもおかしくはありません。腰痛を抱え、職業病だからと自らに言い聞かせ腰にコルセットを巻き、我慢をしながら作業をするのは特別な事では無くいわば一般的な事です。

また、荷物が所定の位置に置かれていない、探し回るといった身体的な負担は日常茶飯事です。

倉庫内は場所が限られている為に、場所や保管する品物によっては屋根に届くのでは無いかという位の高さまで、商品を上積みしたり、棚を高く積み上げ、その中に商品を置く事が良くあります。

時期や商品の在庫によっては必要以上に物を抱える事は、倉庫業務には良くある事ですが、問題は商品の置き方にあります。

商品が棚からはみ出ている、箱が破れていて中から物が落ちそうとい事は良くあります。特に危ないのが頭上から物が落ちてくる事です。

倉庫内ではフォークリフトが所狭しと勢い良く動いています。どんなに経験があるフォークリフト運転手でも急いで作業をする為かミスをする事があります。

それはオペレーションミスから商品を落とす、破損をするといった顧客に対して損害を与える事です。更に、商品を落下した位置に作業員がいる場合、大けがに繋がります。言わば安全確認が全く無いのです。

倉庫内なので空気の循環が悪く、暑い寒いは常にあります。

夏場の水分補給は当然しなければならないのですが、商品が汚れるのを防ぐ為、水の持ち込みを禁止している倉庫もあります。

これら全て、現場で働く従業員の肉体的負担・危険に関わる部分であり随時の見直しが必要とされるべき項目です。

フォークリフトの運転が荒い、これは歩行作業員とフォークリフトの移動する場所や方向を決めるだけ、つまり「動線の確保」をするだけで解決をします。商品を探し回るといった毎日ある事は、置き場所の固定や見直しを図る。現場での肉体的苦痛の多くは、「ムリ・ムダ・ムラ」の見直しを図らない事にあるでしょう。

 

 

長時間労働

一般的なフルタイムの労働時間は9時から17時もしくは18時までの勤務時間に休憩1時間の実働7~8時間という捉え方が一般的です。休憩時間抜きで拘束時間が12時間以上になるとブラックの領域に入ると考えられます。

倉庫作業の場合、非正規雇用のアルバイトやパートの契約労働時間内に終わらなかった入荷や出荷の作業や事務処理を、翌日の出荷や入荷の作業に持ち越さないようにする為、契約社員や正社員が残業をして片付ける傾向があり、自ずと管理する側の労働時間が長くなります。

このプレッシャーは1社単独で自社の商品を倉庫から出荷しているメーカーの方が強い傾向があり、数値目標に到達させる為、長時間の残業によって目標との差異を埋める為、疲弊するという悪循環が生まれます。

常に高い目標を設定され、到達させる為のプレッシャーを感じる事で、周囲の作業者似対しての風当たりが強くなり、パワハラまがいの言動を行った結果、職場環境を悪化させ、ブラックという評価が確立する事で優秀な人材が集まりにくくなります。

長時間労働という観点で判断すれば、主に正社員や契約社員が疲弊し、全般的な業務に精通した人材の育成がなかなか進まず、目標管理の負担がいつまでも特定の人物にのしかかる点が、ブラックと言えそうです。

休日が少ない

「働き方改革」によって、法定休日を増やそうという動きがありますが、現時点で一般的な休日の定義は週休2日です。週に1日を下回る1ヶ月に2~3日の休みを一般的にブラックな労働環境と捉える傾向があります。長期の雇用契約を結んでいる非正規雇用のアルバイトやパートの場合、繁忙期は休日出勤が増え、休みが少なくなるなど、休みやすい時期とそうでない時期で差がある事が珍しくありません。また、1日単位で雇用契約を結ぶアルバイトも多く、時給が安いのを補うために、自主的に週6日労働を選択する人も存在します。

繁忙期でない時にまとめて休みが取れるのであれば、年間を通してトータルで考えるとブラックとは言いきれませんが、時給制で働いている人にとっては「働き方改革」によって休みが増えるという事は収入減につながり、休みが強制されるような制度が導入されれば、減った収入を補うために副業など新たな収入源の確保を強いられる事になります。

給料が安い

物流業界では、慢性的な人手不足に陥っていると言われていますが、低賃金が人材確保の足かせとなっている場合が多いようです。

一部の通販サイトなどで時給を上げて人手を確保しようという動きがありますが、特に1社単独で倉庫を持つメーカーにとっては、輸送費や海外の工場での人件費の高騰などの影響により、より人件費のかかる倉庫での賃上げには消極的な傾向が強く見られます。

時給制の非正規雇用のスタッフの給与は、政府が目標に掲げる時給1500円以上にはほとんど届いておらず、実際には最低賃金をわずかに上回る程度に設定される事が多いのですが、派遣会社から倉庫の運営会社には派遣手数料を上乗せした金額が提示されている為、倉庫側も運送会社の物流コストの値上げによる増加など他のコストアップ要因の影響も受けていて、更にコストのかかる賃上げを回避する傾向があり、なかなか時給が上がらず低賃金に甘んじる人が多いです。

更に、倉庫作業に従事する非正規雇用のアルバイトの中作業が基本的に1日単位で完結させる性質のものであることから、長期の雇用契約を結んでいる人の割合が少なく、正規雇用への転換の道のりが非常に厳しい点も、なかなか賃金が上がらない事に影響を及ぼしています。

実際に倉庫作業の非正規雇用の時給から計算すると1ヶ月に貰える収入は平均して10万円台と少なく、倉庫での作業をする人にとって低賃金がブラックと捉えられ、敬遠される傾向があると言えそうです。

残業代が出ない

残業代に関しては、倉庫作業の非正規雇用のアルバイトやパートについては働いた分だけ法定賃金が支払われる傾向があります。

繁忙期に残業をすれば、働いた分だけ正規の割増賃金で支払われます。
しかし、非正規雇用のスタッフが帰った後、残った入荷や出荷や事務処理の作業を片付ける正社員や契約社員にとっては、作業にかかる時間によってはサービス残業をせざるを得ない事が多いようです。

出荷数、入荷数などが日々数値目標として管理されている為、特に1つのメーカーが単独で持っている倉庫の場合、上からの目標達成のプレッシャーが総合型通販サイトよりも厳しい傾向があり、非正規雇用のスタッフに対しても、倉庫内を常に走り回るような厳しい態度で臨む事が多く、人手不足に更に拍車をかけてしまうようです。
時間外の労働時間に関しては、「働き方改革」によって残業の抑制が進むことによる収入減など、仕事の内容や、置かれる立場によってはブラックになり得ると言えそうです。

また、待遇面の不備が倉庫作業において全般的な業務に精通した人材の育成の遅れにも繋がり、熟練した作業者の不足を招き、正社員や契約社員などの管理する立場の人が出荷や入荷の作業にも参加せざるを得ないという悪循環に繋がっています。

 

ずぼらな管理体制

 

倉庫作業は人間関係による精神的な上下関係が成立しています。一般企業・職務では役職による上下関係が成立し、上司が部下に指示する事で業務連絡は勿論、責任の有無がハッキリします。又、女性であれば、多少のハンデや配慮を考慮する事もあるでしょう。

倉庫作業では多種・他業種、どういった企業でも共通していますが、社員が現場で積極的に仕事をする事はありません。例えば、社員が現場で仕事をする人数や業務内容はいたって限定的と言わざるを得ません。社員はあくまで管理者であり作業者では無いのです。

現場作業は主にパートやアルバイトがリーダー職を担い、現場を取り仕切っているのが一般的です。

リーダー職は自社が雇用しているスタッフに対しては甘く大目に見る傾向があります。以前、マスコミにも取り上げられた、倉庫内での悪質業務や隠ぺい体質が記憶にあります。倉庫内で商品を投げる・蹴とばす・商品の上で寝そべるといった行為です。

悪い行為である事は勿論、派遣会社のスタッフ等外部の人間が見たら非常に印象が悪い現場です。その場で働く人材も仕事を離れれば一人の消費者・お客様なのです。

又、リーダー職が短期のアルバイトや派遣会社のスタッフに指示を出すのは勿論ですが、業務終了の際に勤務作業時間のハンコの捺印に至るまで、つまりは非正規労働者が非正規労働者に指示を出し直接的に管理をしている状況には閉口してしまいます。

短期就業者や派遣会社登録スタッフの立場では、就業した会社に対して意見を言いにくい状況でありますが、それを良い事にワガママを通すといった事は存在します。

事前に確認した契約時間を守らない、残業は当たり前にあるもの、作業時間を超えて退勤の時間を過ぎたら残業扱いにはしない、商品の破損は責任転嫁等。

リーダー職に就く人物がどの位、作業に精通しているのか、一般常識の良し悪しを持っている人物なのか、非常に疑問を持ちます。そもそも、非正規社員が現場リーダーを務めるという事は、最低限、各自の契約や会社の就業規則程度は知っておくべきです。

少なくとも、契約に関わる作業時間やハンコの捺印は社員が責任を持つべき事でしょう。付け加えると、非正規社員にリーダー職を任せてしまうと、現場内で互いに非正規雇用でありながら上下関係が生じる為、当然ながら疑問や違和感から軋轢が生じます。

 

 

まとめ

 

一般的に立場が上になるほど労働時間が長くなる傾向があり、ブラックかそうでないかを一刀両断するのは難しい面があります。

倉庫作業の場合、労働時間に関しては、非正規雇用のアルバイトやパートよりも、正社員などの方が、非正規雇用のアルバイトやパートの作業の残りを片付けたり事務処理に時間を取られ、労働時間が長くなる傾向があります。
給与に関しては全体的に安い上に非正規雇用が多く雇用形態が不安定なので、収入の面ではブラックの要素があると言えます。

しかし、作業の環境については、特に出荷のピッキング作業は一日中倉庫の棚から棚へと歩き回り、体力を消耗します。一口に倉庫作業と言っても、休憩は例えば8時間労働なら1時間きちんと取りますし、空調や水分補給に配慮してくれる会社もあります。一方で水分補給は水のみ、夏場の暑い時期も送風機などの作業環境に配慮がないなど、会社によって対応が異なります。

作業環境に関しては、夏場の熱中症予防の取り組みなど、改善されている面もありますが、時間外労働、休日、給与に関しては、ブラックに当てはまる要素を含んでおり、更に今後「働き方改革」の弊害によってますます苦境に立たされる可能性を否定できません。