ストレスが原因で退職を決意
私が転職をしようと思ったのは、人とのコミュニケーションをとるのが苦手だったからです。
私が転職をする前は、舞台関係の仕事に勤めていました。
短大を卒業し、たまたま見つけた舞台の仕事に応募したことがきっかけで、採用してもらうことができ、自分なりに必死にやってきました。
ですが、昔から人との会話が苦手だった自分。まさかこういう事で転職を決めることになってしまうとは想像もしていなかったのです。
入社した初めの頃は大丈夫だったのですが、だんだんと仕事で覚えることが増え、しかも周囲の空気を読んで積極的に動かなくてはいけませんでした。
上司や同僚とのコミュニケーションも、舞台中では欠かせません。
次第に精神的にも肉体的にもストレスが溜まっていき、自分でもどうやって苦手な部分を改善させたらいいのかわからなくなっていったのです。
気が付いたら、まともにご飯も食べなくなっていました。
今思うと、鬱の一歩手前という状態だったと思います。
会社の上司に辞めることを伝え、荷物は実家の両親が運んでくれました。
私が辞めると話した時、両親は物凄く泣いていました。
今でも目に焼き付いていて忘れることができません。
両親には本当に申し訳ないことをしたなと思っています。
でも、これ以上ここで働き続けていたら、自分が壊れてしまう気がしたのです。
お菓子工場へ転職を決意
転職活動中はハローワークに何度も足を運んでいました。
それでも自分がいいなと思った仕事がなかなか見つからなかったのです。
自分の性格や得意分野を考えてしまうと、仕事が限られてしまうような感じがしました。
ハローワークに行っては休み、また行っては休み、その繰り返しです。
次第に自分は必要な人間ではないのではと思い、1ヵ月くらい部屋にこもっていた時もあります。
そんな時に私の母が、私に一枚の求人票を持ってきました。
どうやら私のことを心配して、こっそりハローワークに行って仕事を探していたそうなんです。
母に渡された求人をみると、どうやら工場で働く従業員を募集しているようでした。
工場での仕事は一度も経験したことがなかったですし、正直私なんかができるのかという疑問が心に残りました。
母の気遣いはとても嬉しかったのですが、昔から細かい作業や手先が器用だった私。
工場の仕事でも、そうした細かい作業があるようで、私にはこういう仕事が向いているのではないかと母は考えていたそうなのです。
母の強い後押しで、私はハローワークの方に行き、電話で連絡をとって決まった日にちに面接をすることになりました。
会社のほうに足を運ぶと、面接してくれた工場長の方が、まずは工場内で何が行われているか見せてくれたのです。
どうやらこの工場はお菓子を製造しているところで、主に焼き菓子をメインに作っているところでした。貴重な工場内の見学。
勤めている人しかなかなか見る事ができないその環境は、自分にとって凄くインパクトが強かった印象があります。
何気なく私達が食べているお菓子。
こんなに手が込んで作られていること自体意識なんてしたことがなかったですし、自分もこうした経験を一度はしてみたい。
そう思ったのです。
自分に合った職場へ転職成功
その面接の時に「明日にでも来ていただけませんか?」というお声をいただき、その場で採用していただきました。
実際に勤めてみると、舞台の時とは180度違う環境に最初は戸惑っていました。
ですが、機械の音やたくさんの人達に囲まれながら働いているのをみると、それがなぜか新鮮に感じられたのです。
しかも工場の仕事ではそこまで従業員の人と話すことはありません。
必要最低限のコミュニケーションは必要ですが、舞台の仕事に比べたらなんとか自分でも頑張れるくらいの環境でした。
また自分と同じくらいの年齢の人達が多く、すぐに仲良しの友達もできました。
今思うと、舞台の仕事でどん底を味わったからこそ、工場の仕事ではある程度厳しくてもやっていけるのだと思っています。
あの舞台での仕事経験がなければ、こうして工場で働き続けることができなかったかもしれません。
そして工場での仕事ではほぼ立ちっぱなしです。
地道な作業がずっと続く中で、腰や腕もじわじわと痛くなっていきます。
そうすると、けっこう飽きっぽい人の場合は、長く続けることができず、何人か工場を去って行ってしまう人もたびたび見かけていました。
それだけこの仕事では集中力や根気が必要になっていきます。
ですが集中力には自信があった私。
一度何かをやり始めると、一日でもずっと作業していられるほど、あまり疲れを感じることがなかったのです。
元々この仕事は性に合っていたのか、長く勤め続けることができたのです。
最初は工場の仕事なんてやり始めて大丈夫なのかすごく不安に感じていたのですが、何事もやってみないことにはわからないということを、この仕事を通して改めて感じました。
今は工場での仕事に出会えて本当によかったと思います。