原則として退職金の前借りは「できない」と心得よう!

退職金制度について

退職金制度は、実は法定的に定められた制度ではなく、会社ごとに制度を構築します。そのため、会社は自由に(とはいえ労働者に著しく不利な制度はNGですが)制度を作って運用することできます。従って、退職金の前借りというルールがあっても、「法律上はOK」なのです。

 

ほとんどの会社は前借り制度がない

ここで問題になるのは、自分の勤める会社自体が、退職金の前借りについて規定を設けているのかということです。多くの会社は退職金の前借りを前提にした制度を作っていないため、退職金の前借りは極めて難しいと思った方がいいでしょう。

 

特例として前借りが認めてもらえる可能性

一般的には退職金の前借りは難しいですが、特例として認めてもらえる可能性はあります。しかし、いくつかの制約や条件があります。

中小企業であること

中小企業であれば、社長に直談判することにより、特例として認めてもらえる可能性はあります。鶴の一声とでもいいましょうか。しかし、中小企業の場合は、退職金の積み立てが十分にできているとは限らないですし、何よりもキャッシュが流出することにもなりますから、財務的に応じられない可能性があります。あくまで会社の業績次第だということです。
これが大企業になると、そもそも社長に直談判するということ自体が非常に難しくなるため、この時点で厳しいでしょう。しかも、株主や社外取締役による監視、社員の平等な取り扱いにもこだわりますから、自分だけ特例として認めてもらえる可能性は限りなくゼロです。

 

仮に前借りできるとしたら

運よく特例として退職金の前借りに応じてもらえるとしても、注意することがあります。

 

借入金額は勤続年数によって決まる

これは退職金の前借りにも前払いにも共通することですが、借りられる金額は「現時点で退職すると仮定して算定した退職金相当額」です。当然会社によって計算方法が異なるので一概には言えませんが、勤続年数10年なら、10年かけて積み立てた退職金相当額までしか借りられません。決して「定年まで働いた場合の退職金相当額」ではありませんので、多くの場合で借りられる金額は金融機関で借りられる金額より小さくなるものと思った方がいいです。とはいえ、給料の前借りよりは大きな金額になるかもしれませんね。
借りられる金額が想像以上に少なくて、必要な金額に届かない場合は金融機関で借金をすることになるでしょう。会社から借りた分は給料から天引きで返済するとしても、それに加えて金融機関に毎月返済する必要があるので、家計への負担はやはり無視できないほどに大きくなるのが一般的です。前借りした分の退職金で何とかしのいでいきましょう。

 

社内で悪い噂が立つ可能性がある

退職金を前借りするというのは一般的には珍しいことです。つまり、最終手段といいますか、身内にも金融機関にも断られ、頼る先がないから退職金を当てにしていると取られても仕方ないのです。「自分には信用がありません」と宣言してしまうようなものです。
お金がないとか信用がないというのは、例えば金銭トラブルに巻き込まれているとかが考えられます。実際にはそんなことないとしても、ここでお金を貸してしまうと、自分まで巻き込まれそうな気配がして、周囲の人間としては関わりたくないのが正直なところでしょう。また、自分の家計管理も十分にできないようでは仕事も似たようなものではないかと推測されてしまいます。実際、自分の体調管理と家計管理は仕事の出来不出来に影響します。そうであれば、出世なり昇進に悪影響が立つこともありえます。
正当でまともな理由があったとしても、社内のうわさというのは広がるにつれて話が盛られていきますから、話が広がってしまうと社内での人間関係に悪影響が出ることもあります。

 

退職金が減る可能性がある

退職金の前借りが運よくできたとしても、定年時に受け取ることのできる退職金は、本来の予定額より減少することは覚悟しましょう。
退職金は会社が、原資となるお金を積み立てて、資産運用をして金額を準備します。つまり、原資が大きくかつ運用期間が長いほど運用効率をよくすることができ、金額をより大きくできます。さきほど、退職金を前借りする際には、「現時点で退職したと仮定して」お金を貸すと述べました。入社時点で定年まで30年ある人が、入社10年時点で退職金を前借りすると、当然ながら10年分の原資が減りますし、また運用期間も30年間→20年間に減少してしまいます。
本来退職金は、従業員の定年退職後の生活を一定の範囲で守るためにあります。場合によっては退職金で住宅ローンの残債を返済することもありうるでしょう。本来もらえる退職金より減ってしまうというのは、定年後の生活や住宅ローン返済に困ってしまうこともありうるということです。個人年金保険など、自分自身で積み立てをしているのなら影響は小さいのかもしれませんが、個人的に行う積み立ては「退職金にどれだけ上乗せするか」を基準にしてプランを作ります。不用意に前借りしてしまうと、プラン作成の前提が崩れてしまいます。

 

敢えて退職金の前借りに依存しない方法も・・・

退職金の前借りは、そもそも難しく、できたとしてもリスクはたくさんあるということがお分かりいただけたでしょうか。こうしてみてみると、金融機関でお金を借りるのが無難に見えてきます。

 

退職金を担保にすることはできない

金融機関で借金をするにしても、担保が必要な場合があります。担保を求められたときに供出できるものがあればいいですが、ない場合は退職金を担保に・・・と考えたくもなりますよね。しかし、退職金は非常に不安定なものです。退職時点での景気状況にも左右されますし、これだけ人材の流動性が高まった労働市場ですから、その人が退職まで勤め上げるかどうかも定かではありません。銀行をはじめ金融機関は、不良債権化を非常に嫌いますから、そうした不安定なものを担保にお金を貸してくれるほど甘くはありません。

 

キャッシングという手もあるが

担保もない、会社からお金を借りることもできないということであれば、今現在の自分のスペックの範囲内でお金を借りる以外にありません。具体的には、クレジット会社などでキャッシングをするのがいいでしょう。担保を供出することなくお金を借りることができますが、こちらも注意点があります。つまり、申し込み時点での自分のスペックなり信用状況が悪ければ、審査で落ちてしまうということです。また、あまり高額な金額を借りることができない可能性がありますので、場合によってはあまり有用性はないかもしれません。

 

そもそも借金をしないで済む方法はないのか?

結局のところ、お金を借りるということは、借りる経路ごとに検討するべき課題とリスクがあるということです。会社で借りても金融機関で借りても、何かしらのリスクはついてきます。そこで発想を変えて、そもそも退職金を前借りしたくなるほど困窮しないようにするのがベストソリューションです。社会人として大学に入りなおすとか留学するなら奨学金(返済不要なものもある)、事故を起こしてしまったなら、損害保険の保険金を使うとか。お金が足りなくなる前に備えておくとか、自分自身のスペックを向上させるという努力をしましょう。他にも、副業をするなどしてお金を自分で作り出す工夫だってあります。仮に退職金を前借りできたとして毎月給料の天引きで5万円返済するなら、副業で毎月5万円稼いだ方がよほどいいでしょう。